埼玉県小川町は、今ブームの「低山」をめぐるハイキングコースが豊富な地域で、町内様々な箇所にある観光案内板にも、初心者向けから上級者向けまで数多くのハイキングコースが設定されています。2024年4月某日、小川町の代表的なハイキングスポットのひとつ「官ノ倉山」「石尊山」をめぐるコースを歩いてみたので、その見どころをレポートいたします。
JR八高線のローカル無人駅「竹沢駅」からスタート
筆者がスタート地点として選択したのは、JR八高線の「竹沢駅」。2両編成でトコトコ走るディーゼルカーで到着できる、ローカル情緒溢れる無人駅です。なお、東武東上線の「東武竹沢駅」というのもありますが、800mほど離れているので注意が必要です。
筆者は9時ちょうどに竹沢駅に降り立ちました。いよいよハイキングのスタートですが、ここから官ノ倉山の登山口までは徒歩でおよそ30分ほどかかります。竹沢駅から5分程にあるコンビニが、飲食物を購入できる最後のチャンスなので、忘れずに準備しておきましょう。
コンビニを過ぎると、安照寺という寺を横目に集落の中の道を進みます。
このあたりは季節の草花を育てている方も多いのか、至る所に美しい花が群生しているのを見かけます。
思わず写真を撮りたくなりますが、個人宅ですのであくまでも鑑賞するだけにとどめておきましょう。
集落を進むと、「三光神社」という古くからある神社が見えてきます。
由緒板によれば、建久年間(1190〜)奥州大川兼任の乱に際して活躍し、その後も武蔵荘園の武士として鎌倉幕府の基礎となってきた「児玉党」の一族・竹沢氏の子孫が創建したと伝わっているとのこと。
鎌倉時代からの歴史ある神社に、旅の無事を祈っておきましょう。
なお、この神社の近くにある「木部公衆トイレ」を通過すると、山を登って降りるまでトイレはありません(筆者が探した限りはありませんでした!)ので、忘れずに済ませておきましょう。
日本農業遺産「天王池」で休憩したら官ノ倉山へ
三光神社から先に進むと、だんだん周囲の山の色が濃くなっていくのが感じられます。
もうすぐ始まる登山に気分も高まりますが、その前に趣のある池を見つけました。
「天王池」というため池で、2023年1月に農林水産省の「日本農業遺産」に認定された「比企丘陵の天水を利用した谷津沼農業システム」の一つだそうです。
丘陵地帯であり河川から水を引くことができないこの地域では、谷筋ごとに多数のため池(谷津沼)を築くことで農業用水を確保してきたそうで、1600年ごろまでに築かれたため池は350以上もあったとのこと。
池のほとりに休憩所を見つけました。
竹沢駅からかれこれ30分近くも歩いてきたので、ここで一休みし軽食をいただくことに。
※比企地域の日本農業遺産についての詳細は農林水産省ホームページをご参照ください。
いざ官ノ倉山・石尊山へ〜短いが山の起伏を味わえる登山道〜
天王池の脇に登山届提出用のポストがあり、山中へ道が続いています。
ここが「官ノ倉山ハイキング北コース」のスタート地点でもあるようです。
池の中を悠々と泳ぐさまざまなカラーリングの大きな鯉の姿を横目に、いざ山登りスタートです。
木々の間の小道を一歩ずつ登ります。
根や落ち葉で多少の起伏がありますが、登山の初心者でも問題なく進める程度なので安心です。
ただしあくまでも登山なので、普通の運動靴ではなくトレッキングシューズの着用をおすすめします。
20分ほど登ると「官ノ倉峠」という表示を発見。
少々開けたスペースがあったので、ここで一休み。
木々が日光をほどよく遮り春風がそよぐ、大変心地の良い場所です。
この場所は分岐点になっており、別の道を進むと東秩父村方面にたどりつくようです。
筆者は山頂を目指すので、官ノ倉山の矢印の方向に進みます。
さらに数分進むと、これまでよりも大きな根が絡み合う少々急な坂が出現。山頂までもう一踏ん張りです。
ついに官ノ倉山の山頂にたどりつきました。
標高344.2mですが、小川町・外秩父の景色が見渡せます。
ベンチがあったのでここで軽食を、と思ったのですが、筆者が行ったこの日は蜂のような虫がブンブン飛び回りながら花の蜜を吸っていたので、山頂での食事は断念。
少し先の開けた場所で軽食を取ることにしました。
官ノ倉山山頂からそれほど歩くこともなく、お隣の石尊山の山頂に到着。
山頂からの景色はこちらからのほうがよいかもしれません。
石尊山という名前と関連があるのか、山頂には石でできた祠が祀られています。
ここからは下り坂になり、小川町の町中に向かっていくのですが、石尊山山頂からすぐの場所に1カ所だけ鎖場があります。
鎖を持ってゆっくり下りれば、足腰に自信のない方でも問題なく下りられますが、落ち葉ですべりやすくなっていますので、(繰り返しになりますが)普通の運動靴ではなくトレッキングシューズの着用をおすすめいたします。
この鎖場を越えれば、あとはなだらかな下りの山道です。
途中に北向不動という不動堂があるので、登山の無事を報告しておきましょう。
長福寺・大塚八幡神社・穴八幡古墳を経由し町中へ
北向不動を過ぎると、道路も舗装されだんだんと山道から集落へ、そして町中の雰囲気に戻っていきます。
公衆トイレとベンチがあるので休息をとり、憩の場にある池に観賞用として飼われている小さな魚たちを見守ったら、再び町中に向けて歩き出します。
途中にはかつての村境を示す石塔も。歴史を感じさせます。
長福寺の先には、地域で飼われているのか、羊が4頭草をはんでいました。
さらに進み、大塚八幡神社の横を通過すると、古墳時代後期(7世紀後半)のものと伝わる「穴八幡古墳」が現れます。
1959年に県指定史跡となったというこの古墳の被葬者はまったくの不明とのこと。
今は整備されて小さな公園になっています。
お昼ごはんとおみやげは小川町ならではのものを
穴八幡古墳のある坂を下ると、小川町の町中に入ります。
お昼も過ぎたのでせっかくなら小川町ならではのランチを…ということで、筆者は小川町に残る酒蔵・晴雲酒造併設のレストラン「玉井屋」で食事をとることにしました。
酒粕をふんだんに使った御膳は、普段はなかなか味わえない旨さ。
酒蔵併設なので、運転しない方には食前酒として地酒のサービスもありました。
まさに小川町ならではの食事を楽しめます。
食事が終わったら小川町ならではのお土産を…ということで、小川町駅の方向に数分歩いたところにあるお土産店「おいでなせえ 小川町駅前店」に立ち寄り。
お酒をはじめ、醤油や塩糀などの調味料から地元のお菓子、和紙や食器まで、厳選された小川町ならではのお土産をたっぷり購入。
まとめ
筆者が朝9時ちょうどにJR八高線「竹沢駅」を出発してから、途中休憩や軽食を数回はさみ町中に戻ってきたのが13時ごろ。ランチをいただきおみやげを買って小川町駅周辺にたどり着いたのが14時過ぎでした。
お時間がある方は、小川町駅から10分ほど歩いた先にある「花和楽の湯」で汗を流してから帰りの電車に乗るのもおすすめです。※2024年11月現在「花和楽の湯」は臨時休業中ですのでご注意ください
歩く時間も3〜4時間程度なので、登山・トレッキング初心者の方や体力に自信のない方でも、十分にお楽しみいただけるコースです。ただしあくまでも登山なので、軍手やトレッキングシューズなどの装備を忘れずに。
竹沢駅または東武竹沢駅からスタートする官ノ倉山・石尊山ハイキングで、小川町の自然・歴史・食をぜひ体験してみてください!