取材日:2021年6月4日
文章・写真:大曽根悠太
埼玉県小川町におよそ100年前に建てられた大谷石の石蔵が、2021年5月にコワーキングスペースとして生まれ変わった。
かつてはタバコ、絹織物の保存庫としても使われていた県内最大規模の石蔵だったが、コロナ禍という時流にターニングポイントを迎え、都心や地方のビジネスマンも快適に働けるワークスペースとしてその役割を変えた。また地域の住人が憩えるカフェスペース、イベントスペースとしても活用され、使い手が思い思いに過ごせる「まちのロビー」のような場として、自分らしい働き方と暮らし方を見つけるきっかけをつくる空間となった。
コワーキングロビーの名は『NESTo(ネスト)』
何度でも帰ってきたくなるような巣(nest)のような温かい空間でありたい、また巣ごもるだけでなく、まちに点在する様々なスポットへ巣立って飛んでいく場所にもなってほしい…との想いと、大谷石による建造がテーマになっていることから”STONE(石)”のスペルを並び替えてこの名が付いた。
かつて小川町は江戸と甲州、そして上州をつなぐ主要な街道沿いの宿場町として栄え、石蔵は富の反映だった。はるか上空を見上げると視覚に入る、棟木(むなぎ)に書かれた”大正十四年”の墨字は定礎。ここは旧三協蔵として、”代物”を守る大切な役目を担ってきた。一定の室温環境を保ち、火事になっても分厚い石が中を守ってくれた。過去のねぎらいを念じ、石壁にそっと手を添え問いかけると、静かに応えてくれる。
館内併設の「F ALLONE(エフアローン) NESTo店 」では、駅前の1号店でも人気の種類豊富なクレープをはじめ、各種スウィーツ、またコーヒーなどのドリンクメニューが充実している。頭をリフレッシュさせたいコワーカーにはうれしい。
( ここのクレープの生地には黒ゴマきなこアーモンドが練り込まれていて、駅前店にはないプレミア感を楽しむことができる)
働く目的以外にも、読書や書き物といった用途でも、野生を呼び覚ます環境が最高の集中力を引き出してくれる。ロビー中央を占める樹齢約100年の杉の木で出来た一枚板のテーブルは圧巻だ。
秋~冬にかけては、床暖房併用の薪ストーブが活躍する。これは、運営元の「NPO法人 あかりえ」がクラウドファウンディンをもとに集めた資金で設置したもの。町内産の木材を燃料に、手つかずとなった里山を美しく再生する地域共生・資源循環を実現するコンセプトも、NESToの持つ大切な要素だ。
ぜひ1時間からでも、その洗練された空間に腰を下ろしてみてほしい。この町が体内に循環させてきたかつての呼吸を、今でも感じ取ることが出来るだろう。
施設名 | コワーキングロビーNESTo (ネスト) |
所在地 | 埼玉県比企郡小川町大塚7−1 |
アクセス | 小川町駅から徒歩約4分 |
電話番号 | 0493-53-6717 |
営業時間 | 平日 9:00~18:00 (※カフェ営業は 09:15~17:45/土日祝休) |
Wi-Fi | あり |
メールアドレス | worklobbynesto@gmail.com |
利用料 | 下記HPを参照 |
公式サイト | https://nesto.work/ |