東京都心から電車で一時間ちょっと。東武東上線とJR八高線が交わりアクセスも良く、”都心からもっとも近い田舎まち”として、近年多くの移住者がこのまちに住み移っている。
通称 “武蔵の小京都”
お隣・嵐山町とそう併称される。盆地の地形や川がまちを繁栄させたことは、京都ととても類似している。1300年の歴史をもつ小川和紙の技術、40年前に金子美登さんによって広まった有機農業、江戸より続いた3つの酒蔵の酒造り…、すべてが美しい川を源にしている。小川町を流れる3つの川は、いずれも一級河川。
まちを横断する川越街道(かつての秩父往還)は、和紙や絹などを運ぶ多くの商人が行き来する主要な街道で、通りには多くの商家が軒をつらねた。
荘厳な割烹旅館、長屋、石蔵…まちの繫栄の象徴だった建築物は時を経て、今では国が認める”産業遺産”となった。そしてこれらの多くは再生され、飲食店や宿、コミュニティスペースとして注目されている。
新旧の魅力が絶えない小川町の魅力を、30のカテゴリーにまとめてみた。
小川町特産の有機野菜・無農薬米を味わう
小川町の自然豊かな環境下で、1971年より有機農業を続けてきた金子美登さんが代表をつとめる『霜里農場』をはじめとし、その実践と考え方を受け継ぐ形で多くの有機農業生産者がこの町に根付いた。
町内では大型スーパーほか、道の駅や農産物直売所、無人直売所など、多くの場所で有機野菜を気軽に購入することができる。
自然と調和した有機農業への取り組みは2010年に農林水産祭「村づくり部門」で天皇杯を受賞。2014年に天皇皇后両陛下が下里地区を視察に訪れた。
うつくしい一級河川で川遊びを楽しむ
小川町と町内を流れる川の関係はとても深い。川の成り立ちとまちの反映との親和性が非常に高いことから”武蔵の小京都”とも呼ばれる小川町。町内を流れる3つの川(槻川、兜川、市野川)はいずれも一級河川に認定されていて、流れも比較的ゆるやかなことから5~8月ごろは川遊びに最適だ。
なかでも、小川町で暮らすひとたちの生活と深に影響力のある槻川を臨む『栃本親水公園』は、遊具のほか水車小屋やトイレが整備されていて、駐車場も完備。高台に立つあずま屋から川を見下ろし、子どもたちが遊ぶ様子も見守ることが出来る。釣りを楽しむ人も少なくない。
2019年にはOgawaOrganicFes(小川オーガニックフェス)がここを中心に開催された。また毎年お盆の時期には『小川盆ノ市』が開催され、たくさんの和紙灯篭が水面を漂う様子が何とも幻想的だ。
町内にはほかにも、川遊びを楽しめるスポットが数多く点在するので、車や自転車で川沿いを渡りながら、ぜひ自分のオススメスポットを探してみてはいかがだろうか?
商都おがわをめぐる
約1300年の歴史を持つ小川和紙や小川絹をはじめ、建具、酒造などの伝統産業で古くから市場として栄え、嵐山町と並んで「武蔵の小京都」と呼ばれている。今でも町家や洋館、石蔵などが 町内に数多く残っている。
熊谷から甲府までをつないだ秩父往還(旧国道254)は、小川町を横断する主要な街道であり、和紙や絹などを運ぶ商人が羽を休める宿場町として多くの商家が軒をつらねた。
その両脇に細く連なる北裏通り・南裏通りにはうなぎの寝床ともいえる小路地数多く存在し、かつては置屋にと勤める遊女が、酒で舞踊で商人をねぎらったという。かつての商業の発展をあゆみを現代に残す5つの国指定有形登録文化財が町内にはある。
埼玉県小川町に現存する5つの国指定有形登録文化財
① 田中家長屋(五軒長屋)
② 割烹旅館二葉本館
③ 割烹旅館二葉本店六六亭(ろくろくてい)
④ 旧玉成舎主屋
⑤ 旧玉成舎石蔵
「しまむら」と「ヤオコー」発祥の地
今では全国区となった「ファッションセンターしまむら」と「ヤオコー」の創業の地が小川町であることは有名だ。商都というだけあって、現在も3つの金融会社の支店がある。明治17年には小川銀行と比企銀行という2つの銀行が設立されていた。日本初の銀行である第一国立銀行の開業が明治6年。それからわずか11年後のこと。地方の小さな町でこれほど早く銀行が設立されたということが、小川町の繫栄を裏打ちする。
今にも過去にも、一歩街中に足を踏み入れれば、歴史の糸がつむがれ、商業と文化のにおいが香ってくるのである。
はるか縄文までさかのぼる ~寺社仏閣史跡めぐり~
小川町は、嵐山町と並んで『武蔵の小京都』と呼ばれるほど、歴史的価値のある寺社や仏閣、城跡などの名所旧跡が至るところに存在する。
また令和の時代にふさわしく、俳人・松尾芭蕉にゆかりのある句碑が町内数か所に点在し、また万葉集の研究者として知られる僧侶・仙覚律師の記念碑(万葉の碑)が小高い丘に建つ。はるか奈良時代に建造された「穴八幡古墳」は、県内最大級の方墳。町の南西部には「古寺」と呼ばれる地名もあるほど…古刹が取り巻く繁栄の時代をさかのぼり、遠く縄文時代から続くこの町の歴史を紐解くロマン旅をしてみてはいかがだろうか?
外秩父の山々をハイキングで楽しむ
小川町は外秩父のバリエーションに富む山陵に囲まれ、日帰りの低山ハイキングにとても人気があるエリアだ。仙元山(299m)、官ノ倉山(344m)、仙元山(837m) といずれも1千メートルに満たない山々が町の南西部を占め、平日~週末問わず、多くのハイカーが朝早くから小川町駅前に集合している姿が目立つ。
実際に歩いてみて驚くのは、登山ルート沿いに点在する公衆トイレとルート標識の多さ。方位磁石を持ち歩かなくても、簡易的な地図さえあれば必ず帰ってこれるような、丁寧新設にガイド&エスコートが施されている。また、町の観光協会が推奨している登山用のパンフレットや、インターネットから閲覧できる電子地図も充実している。
ほとんどのルートは半日ほどで周り切れるが、一日を通して本格的な登山を楽しみたい方には、隣接するときがわ町~東秩父村との3町村に連なる堂平山(875.8m)をめぐるルートがオススメ。毎年春には、これらの山々を含む7つの峰々を縦断する「外秩父七峰縦走ハイキング」が盛大に行われる。登山ビギナーという方は、まず手はじめに、仙元山をめぐるコースから歩いてみてはいかがだろうか?
外秩父を自転車でポタリングする
小川町は、その自然を満喫できるアウトドアに応じた設備・機能が充実している。登山はもちろんのこと、最近はサイクリングニーズに応じた、レンタサイクルのサービスも充実している。小川町のみならず、近隣のときがわ町や東秩父村など、比企郡や外秩父エリアの美しい景色をより広い視野で、かつ丁寧にじっくり観光するのであれば、やはり自転車移動が最適だろう。
おいでなせえ小川町では、現在スポーツバイクのレンタルによる、小川町とその周辺を楽しく走ってめぐるポタリングツアーを不定期で開催している。次回のツアー開催は7月の夏シーズンを予定。のどかで雄大な自然の中を一緒に走ってくれる方、大募集中!
小川和紙の質感を地肌で感じる
はるか昔から、町人の日用使いとして生活の中に浸透していた小川和紙の伝統は、約1300年の歴史を有する。
中でも最高級品として知られる『細川紙』は、日本の国産楮(こうぞ)のみを使用し、小川の山里から生み出された清流を用いて漉かれる。2014年に島根の『石州半紙』、岐阜の『本美濃紙』とならび「和紙 :日本の手漉和紙技術」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
現在隣接の東秩父村を含め、和紙漉きの技術を有する職人は数えるほどとなった。昭和11年に竣工した和紙の近代化のため、埼玉県立製紙研究所として建てられた「小川和紙体験学習センター」では、小川和紙を用いた工芸品の展示を観られるほか、実際に和紙すきを実践できる一日体験コースなどがある。
この小川和紙を継承する町内の工房のひとつ「紙すきの村」では、伝統の小川和紙を製造・販売するほか、2021年6月30日までアートギャラリー展『Art on Ogawa-washi Size A4project展』を開催。小川和紙特有のやさしい手触りを、ぜひ実感して頂きたい。
2021年春・小川町駅前に観光案内所『むすびめ』新装オープン
2021年4月、小川町駅に新たな魅力発信拠点としての観光案内所がリニューアルオープンした。もともとは昭和初期に創業の旧料亭・二葉支店を改修し、駅前通りにあった旧「観光案内所 楽市おがわ」から機能が移転。元料亭の柱や梁はそのままに、地元建材をふんだんに使った期のぬくもりと、小川和紙による装飾で和の雰囲気を感じることが出来る。外壁は全面、小川の”川”にちなんでかあざやかな青色で染められ、令和の新たな観光案内所のスタイルを感じ取ることが出来る。管内では、町内やその近辺の観光パンフレットほか、和紙製品をはじめ、地元の民芸品や工芸品を買うことができる。 また、同建物内には『移住サポートセンター』が隣接し、移住希望者に空き家や空き店舗の橋渡しをする。
プライベートキャンプを楽しむ
Plum Garden for campers
小川町の外れにある地域に今年OPENしたキャンパーのオアシス『Plum Garden for campers (プラムガーデン)』。その名の通り、場内にはプラムの木々がなり、かわいらしい雰囲気をつくっている。広大なキャンプ場とは違い、山すその平場を開拓した小規模のキャンプ場だが、最大でも5組ほどのグループまでの受け入れといことで、プライベートキャンパーもゆったり落ち着ける静かな空間が広がる。
場内は自然環境に配慮した機能を重視し、トイレはコンポスト仕様、電機や照明は太陽光の力で自給するオフグリッド仕様。もちろん火も薪を燃やし、営火場はコンクリートなどの埋め立てがなく、地面に薪を配備して着火できる。自然に負荷なく、あるがままのワイルドなキャンプを楽しめる。場内のそこかしこに木のぬくもりが感じられ、お手製のトイレ木舎は、まるで西洋のコビトの家のような可愛らしい作り。
住人募集の小鳥小屋や、うたた寝や読書にもってこいのハンモックが何とも愛らしい。専用駐車場からキャンプ場までは橋を渡っていくため、キャンプ道具の荷運びにはリヤカーの貸し出しがあるのもうれしい。
学生時代、バックパックの世界旅行で出逢ったという2人のオーナーは、『宿泊に来てくれるキャンパーと一緒にここを創っているような感覚です。』と言う。オープン間もないからこそ、新緑のようにだんだんと深みを増す開拓キャンプ場。宿泊をはさまないDayキャンプから気軽に楽しむこともできる。ぜひ一度、足を踏み入れてみてほしい。
満点の星空のもと天体観測を楽しむ
小川町の北西部、隣接する寄居町とのほぼ境目に位置する金勝山山頂にある県立の教育研修センター。ここでは、屋上展望台では星空観察もでき、埼玉県髄いつのプラネタリウムで星座の神秘を学ぶことができる。雄大な山林の自然を楽しめるたくさん体験や宿泊も可。
敷地内には、バンガローやテントが常設され、ニーズに応じたアウトドア泊を楽しめるほか、屋外炊事場をつかった調理や薪割り、営火場でのキャンプファイヤーなど本格的なアクティビティを楽しめる(BBQの食材や、薪も販売している)
また本館では、学校の部活合宿、団体研修などのグループ受け入れが出来る施設が充実している。大きな食堂や温浴場、四季を通して、小動物や野鳥、昆虫など生物の宝庫で、遊歩道を散策しながら生態系の息吹にも耳を傾けてみてはいかがだろうか?