取材日:2021年6月6日
文章:大曽根悠太
奥武蔵の山なみが、まるで岩肌のように周囲をかこう埼玉県越生町。その山奥に、30年以上も前から続く一軒家カフェがある。それはそれは、まるで童話の世界に迷い込んだかのような不思議な世界。
~ 来るもの拒まず。去るもの追わず~
ひとたびゲートをくぐる瞬間から物語ははじまる。店名の通り、山猫がそこかしこから自分を監視しているような独特の緊張感と幻想感。本館の入り口扉に手をかけようとした瞬間も、大きな顔の妖艶な猫がお出迎えする。
ここ山猫軒の歴史を少しひもといてみる。
オーナーの南さんがここでギャラリィ&カフェを営んで30年以上の歳月が流れている。「空気と水の美味しい場所に住みたい」という願いから、1987年「古民家ギャラリィ『山猫軒』(旧山猫軒)』がオープン。もとはカメラマンであるオーナーが写真館としてはじめた。そこから時を経て、現在の「ギャラリィ&カフェ山猫軒」となった。当時の日本は”田舎移住”や”農的生活”、”サステイナビリティ”といった考え方がまだまだ浅かった時代。南さんの自給生活の第一歩となったのは、1982年の町田市。より理想的な環境を求め、その3年後に越生町に移住、米作りから養鶏まで自給農業を本格的にスタートさせた。この営みが多くの人たち、地域との繋がりを深め、波紋のように広がっていったのだ。
もとの店名の通り、昔も今も、ここは”ギャラリィ”だ。広い2階建ての館内は、見渡すと大きなモノクロフィルムが壁を占めている。オーナーがこれまで撮影してきたポートレートや風景写真の数々…これらに囲まれた空間では、週末限定で頻繫に企画展や音楽イベントが行われる。
「暮らしの中で、大地の上で、息づく作品展を…眺めすぎるだけの作品展から、じっくり腰を据え、語り、使い、味わえる作品展を」というコンセプトのもと開放された古民家ギャラリーは、長く多くの人々に親しまれているのだ。
もちろんカフェ空間としての利用としても、多くのファンがついている。雨の日は店内でドリンク片手に読書にひたり、晴の日はテラスに出てそよ風を浴び、ハンモックでうたた寝するもいい…
テラスからは奥武蔵の山々の緑を間近に眺めることができる。
自給自足の中から得られた素材を使った料理も楽しみたい。
たっぷり玉ねぎをじっくりと煮込んだオリジナルルーの「古代米野菜カレー」は、無農薬有機栽培の胚芽米・赤米・黒米や、野菜を多く使用した栄養価の高いカレー。国産地粉を使用した「天然酵母ピザ-」は、注文を受けてから生地を伸ばすため、コシと風味を楽しむことができる。トマトソースとモッツァレラチーズたっぷりのマルゲリータなど各種。
食後は、エスプレッソやラテと一緒に、自家製ケーキにも舌つづみ。
帰り際には、おみやげコーナーで、越生町やその周辺の生産者や作家の手作り品を見て、買うこともできる。
何かお気に入りの一品に出逢えるかもしれない…
どことなく「注文の多い料理店」にも似た雰囲気を感じる人も多いと思う。ついつい、様々なオーダーをしたくなるほど、魅力的なモノとコトにつつまれる山猫軒。
店内をソロソロと走る”店員たち”とのふれあいも、楽しめる魅力のひとつだ。
なお、この「山猫軒」ができるまでの歴史や、オーナー南さんの自然と調和した暮らしに対する考え方をもっと知りたい方は、「山猫軒ものがたり(南千代著/麦秋社)」で詳細を読み込むことが出来る。ぜひ一読してみてはいかがだろうか?
施設名 | ギャラリィ&カフェ山猫軒 |
所在地 | 埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷137-5 |
アクセス | ・電車でお越しの場合 東武東上線坂戸駅のりかえ ⇒ 終点・越生駅下車 ⇒ 駅前発バス黒山行き『麦原入り口』下車 ※バス問い合わせ先 049-356-2001 ※駅前にタクシーも有り ・車でお越しの場合 関越道 坂戸西スマートIC より 20分 関越道 鶴ヶ島IC より 30分 圏央道 鶴ヶ島IC より 30分 圏央道 狭山日高IC より 30分 |
電話番号 | 049-292-3981 |
営業時間・定休日 | 土曜日 ・ 日曜日・祝祭日営業 ギャラリィ&カフェ 11:00 ~ 19:00 ライブ開催時〜22:00まで (※新型コロナウイルスの影響により、ライブ開催時 21:00までとなります) 月~金定休 |
駐車場 | あり |
公式サイト | https://www.yamaneko.info/ |
メニュー例 | ●お飲み物● エスプレッソ(フレンチ) カフェラテ カプチーノ 無農薬の紅茶 ●ケーキ● ラムケーキ-rum cake (400円) クリームチーズケーキ (400円) クラシックショコラ (400円) ●お食事● 古代米野菜カレー (1,200円) 天然酵母ピザ (1,250円/一人前) …etc |